労働契約期間の定めの有無による不合理な労働条件格差を禁じた労働契約法第20条の判断をめぐって争われた2事件に対する最高裁判決が6月1日に。
(長澤運輸事件)
正社員と職務内容が同じ定年後再雇用者に対する賃金・賞与格差の違法性が争われた事件で、最高裁は、
①事業主が高年法により60歳超高年齢者の雇用確保措置を義務づけられている中、賃金コストの増大を回避する必要等からも、定年後継続雇用における賃金を定年退職時より引き下げること自体が不合理とは言えない、
②定年後継続雇用において、職務内容やその変更範囲等が変わらないまま相当程度賃金を引き下げることは広く行われており、その引き下げ幅を縮める努力をしたこと等からすれば2割前後の賃金減額は直ちに不合理とは言えない、
として違法性を否定し、高裁の判断を支持。
一方、各賃金項目における正社員との格差について、精勤手当は「正社員との職務内容が同一である以上、皆勤を奨励する必要性に相違はない」とし、定年後再雇用者に支給されないことは不合理に当たると判断。同手当の不支給と、これを算定基礎に含めた時間外手当を支給しなかったことについて会社側の過失責任を認め、精勤手当相当分の損害賠償支払いを命じるとともに、時間外手当に係る損害賠償請求についての2審判決を破棄し高裁へ差戻。
<判決文>
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/785/087785_hanrei.pdf
(ハマキョウレックス事件)
正社員と職務内容が同じ契約社員に対する諸手当の格差について違法性が争われた事件では、契約社員に対して不支給または支給格差が設けられていた無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当について
不合理な労働条件の相違とした高裁判決を支持。
一方、高裁判決で棄却された皆勤手当の格差について、最高裁は「出勤する者を確保することの必要性については、職務の内容によって両者の間に差異が生ずるものではない」として不合理な格差と認定。会社側の上告を棄却するとともに、2審判決の皆勤手当に係る損害賠償請求部分を破棄し、高裁に差戻。
<判決文>
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/784/087784_hanrei.pdf